東京・兜町に位置する証券会社の東京店ビル。金融街の中心日本橋兜町の玄関口を暗示するような象徴性のある建物とするため、煉瓦による外壁を採用。ステンレスのウォータイを入れて躯体の外壁に煉瓦を積み上げていく“中空積み工法”とすることで、高層建築でありながらも地震に強いファサードを組み上げた。煉瓦の長辺と短辺を交互に積んでリズムを生む“フランス積み”にさらに凹凸を施し、オリジナリティの高い模様編みを具現化している。
1998 設計/アトリエ北野建築計画 施工/北野建設 所在/東京都中央区
Photographer:
Forward Stroke inc. 奥村浩司
アトリエ北野建築計画 代表
“中空積み工法”による煉瓦ファサードを持つ高層建築にチャレンジするにあたり、頼りにしたのが高山煉瓦建築デザインである。
1990年代に私たちが設計した南紀白浜の『ホテル川久』で二代目の仕事ぶりに接したことを始まりに、以来、ここぞというときの煉瓦積みには常にその熟練の技を頼りにしてきた。三代目に代替わりしてからも、煉瓦に対する惚れ込み具合は二代目と比べても遜色なく、さらに意匠や積み方に現代性や革新性をプラスして、われわれ設計者の意図を細かく汲んだサポートを任せられるのは心強い限りだ。
このプロジェクトにおいても、煉瓦ファサードの具現化における確かな施工技術はもちろん、オリジナリティあふれる模様編みの技術提案やアーチ部などの積み方に対するアドバイスにはとても助けられた。全体的なプロポーションや意匠の創出は、当然のことながら私たち設計者の役割ではあるけれど、それに具体的なかたちを与え、雰囲気を纏わせるためには、卓越した職人との共同作業は欠かせない。その意味で、高山煉瓦建築デザインは、私たちの建築に必要不可欠なパートナーだと言うことができるだろう。