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上州富岡駅

群馬県富岡市に位置する上信電鉄上州線の駅舎。2014年に世界文化遺産に登録された木骨煉瓦建築『富岡製糸場』への玄関口であることを意識して、煉瓦を単なる化粧材としてではなく、構造体の一部として機能させる“鉄骨煉瓦構造(鉄骨造と組石造の混構造)”が採用された。これは、鉄骨柱に溶接されたブレースを煉瓦で挟み込むことで強い耐震性を得る独特の構造形式で、この工法の開発により、日本における煉瓦工法の新たな可能性が切り開かれることとなった。

DATA

2014 設計/TNA 施工/佐藤産業 所在/群馬県上州富岡市

Photographer:
Forward Stroke inc. 奥村浩司

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INTERVIEW

新井久敏

群馬県 県土整備部
高崎土木事務所 次長

過去と未来をつなぐ煉瓦建築

この駅舎は、2011年に実施された設計競技によって選ばれたものです。明治初期に建設された木骨煉瓦建築『富岡製糸場』の最寄り駅という歴史的・地理的コンテクストを踏まえ、煉瓦を本来の使用形態である構造体の一部として用いた点が高く評価され、選出されることとなりました。もちろんその際に、過去の工法をそのまま継承するのではなく、“鉄骨煉瓦構造”という現代日本に求められるニーズを満たす革新的な工法が提案されていたことも大きな要因です。
個人的には、駅舎を構成する煉瓦の色が、『富岡製糸場』の赤茶色を引き立たせるベージュに近い薄茶色であることがとくに気に入っています。駅舎全体が6.5mもの高さを持つ屋根で覆われた半屋外的空間であることが開放的な大らかさを備えていて、重厚な製糸場との効果的な対比となっているのもいいですね。
過去の遺産に敬意を表しつつ、それを未来に向けて発展継承させていく。その意味でこの駅舎は、伝統と革新が共存する世界遺産の街の一角を構成するにふさわしい建築になったと確信しています。

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